インターネット回線による電話サービス、SKYPEによって接続されたコンピュータがある。一台の前には被写体が座り、作家の手元にあるもう一台のコンピュータには、モニターに直結した作家手製の ピンホールカメラが設置されている。作者の相川勝と彼等は住んでいる場所や時差、ネットワークの状態など大きく異なるが、facebookやskypeなどでお互いの状況を共有している。
相川はskypeにより、彼等のプライベートで無防備な空間に侵入する(PCはたいていプライベートな空間にある)。そして彼らのインターネットとともに生きる生活を写し出す。

こうして世界を結ぶデジタル回線によって得られた光をフィルムに感光する30秒間、被写体達は思い思いのポーズをとり、カメラの前で静止する。また、デジタルとアナログを同時に用いる手法は、古今の 技術が交錯する場ともなっている。
相川は震災後、この作品を少しずつ作り始めた。震災後、交通が分断され電話が不通となるなか、各地の被災地ともっともコミュニケーションが図れたのはFacebookを初めとしたSNSツールであった。

ネットワーク上を流れていく膨大な情報のなかで、そこにあったコミュニケーションのはかなさ、かけがえのなさを切り取り痕跡として残している。

制作年:2013年 技法:ゼラチンシルバープリント サイズ:94x345mm (each)

pinhall camera system exhibition view

このシステムを使った、もう1つの作品が「ポストカード」のプロジェクトである。 相川は、世界各地の観光名所に設置された、live cameraを利用してポストカードを作製した。 相川勝は、モニターにリアルタイムに映し出される世界各地の風景を眺め、よりポストカードにふさわしい瞬間を待ち、ピンホールカメラで撮影する。 現地でしか撮ることができない、遠く離れた風景を撮影したこの作品を眺める鑑賞者も、作者と共にその窃視的な好奇心を満たすこととなる。

相川勝は、同じ方法で撮影しながら、個人的でプライベートな関係を撮った写真と、Web上で誰もが見ることができるオープンな風景写真という、両極端の性質を持つ作品を同時に展示する。
それは、ネットワークと写真の両方の特性を示し、その中にある社会性と問題点を提起している。

制作年:2013年 技法:Cプリント サイズ:97x145mm (each)